「焼肉を極めるというのは、ホルモンを極めることなんですよ」◆前編

ゲスト:『スタミナ苑』店主・豊島久博さん、雅信さん

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平日は5時開店なのですが、ボクはいつも2時間前には到着します。
並びながら時折、店主・豊島さん御兄弟の仕込みを拝見させていただき、お肉の勉強をさせていただくためです!

ハツ。これは最近開発され、絶妙に焼かれて出てくるのですが、実は念入りに包丁で”仕事”を入れているんです。
「筋を細かくはずしておかないと料理に響いてくるんだよねぇ」
なるほど!
豊島さんは最後の仕上がりが見えながら仕込みを進めているんですね。

おっ!今日のまかないはすき焼きだ!いや、牛丼か!?
12月は肉のゴールデン月。
いちばんいいお肉の切り落としを使っているので、お店の外までいい香りが漂ってきています。

「さぁ、栄養つけてね。今日もたくさん並んでくれてるからね」と、つかの間のまかないタイム。
高校球児が食べているカレーのように、みんなでテーブルを囲む食事は本当に美味しそう。
これから深夜まで食事ができないので、みなさん御飯が大盛りです。

開店! 店前に盛り塩をしてから暖簾をかける、これがスタミナ苑の開店の儀式。

第一のマストメニュー・カクテキは干し柿の甘味がほんのりと感じられる。
しかも大根がおおぶりなのでガリガリと食感も楽しめ、それによって”胃が起きる”んですよ。
なにから何まで計算ずくのスタミナ苑。すごい!

そしてサラダ。これは”御飯が食べられるサラダ”とボクは言っています。
海苔や胡麻、お酢?? うーん、何が入るとこんなにおいしくなるんだ?
ボクの経験上で申し上げますと、サラダが美味しいお店は絶対にお肉が美味しいのです!

こちらは大根と牛スジ煮込み。
ご主人曰く、「本当の黒毛和牛を使っている牛スジ大根はそんなにないよ(笑)」
「ホルモンの煮込みもホルモンの水分で煮込んでいくんだよね」
本当にすごい。

こちらが裏メニューの通称『ジモン盛り』
焼きハツやガツの昆布締め、センマイ、アキレス腱などが盛られた奇跡の一皿。
「このセンマイ、塩で揉むんだけど、コップ一杯くらい水がでてくるんだよ。それがアクであり雑味なんだよね」
「うちのホルモンはね、そういう下仕事をしっかりしてるから、今日も寝れないね(笑)」
「焼肉を極めるというのは、ホルモンを極めることなんですよ。意味わかる?おいしいお肉はお金で帰るけど、ホルモンはお金がじゃ買えないんだよ」
ホルモンは長い長い人間関係から生まれる奇跡の仕入れとご主人たちのような実直な仕事が要なんです。

テール焼きはご主人が福岡・博多に足を運んで食べた料理を自分なりにアレンジして完成したという逸品。

自称”日本テール肉はずし大会優勝!?”のボクがはずしたのがこちら(笑)。
お肉の旨味が広がり、まだこの段階でお腹いっぱいにしてはいけないと思いながらも箸がすすんでしまう。まだ鉄板に火をつけていないのに……。

――後編につづく

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