土瓶蒸しと言うと、皆さんどんなものを思い浮かべますか?
代表的なのは松茸。それから鱧や銀杏。白身魚や鶏肉を使ったものもありますよね。
出汁と一緒に蒸されたことによって、その食材の最高のポテンシャルを引き出してくれる、これが土瓶蒸しの醍醐味です。
土瓶蒸しは小さなおちょこで、まずお出汁を楽しむところから始まります。
香り、旨味、そしてほんの少しカボズで香りをつけて、再びいただき、お出汁がなくなったところで具をいただく……。
これが皆さんが思い浮かべる土瓶蒸しだと思います。
実はこれって本当は少し違うんです。
もともと土瓶蒸しというのは松茸を美味しくいただくために考えられた調理法。
写真で紹介しているのは京都『緒方』さんの土瓶蒸し。ここで正しい土瓶蒸しを教えていただきました。
付け加えるとこちらではまず土瓶がかの魯山人さんの作品です。
ということでまずは土瓶自体を楽しんで、中を見ます。
すると土瓶に入っているのは松茸だけ。
少し出汁は入っているのですがほとんどが松茸で埋め尽くされています。
つまり余分なものはいらないんです。
土瓶で蒸すと松茸からエキスがこれでもかというほど溢れ出してきます。
それをおちょこでいただく、これが本当の土瓶蒸し。
松茸が形としてはないのに、ある意味インスタントの永谷園の松茸のお吸い物よりも断然に強い、天然の松茸エキスの旨味。あぁこれが本物だとうなってしまいます。
出汁を飲み終わった松茸も”出がらし”のようなものではなく、ふんわりと旨味がきっちり残っています。
最近こういう本物のスタイルの土瓶蒸しが少なくなったのは、松茸が昔に比べて収穫できなくなったから、ほかの食材も使ってしまうのだそうです。
あぁまた早く秋が来ないかなぁ。
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