お寿司屋さんにとって、酢飯というのはすべての要。
鮪の仲買人さんにあえて自分の店の酢飯を食べてもらって「この酢飯に合う鮪を入れて下さい」という職人もいるほど。
それほど酢飯というのは寿司職人にとって大切なものなんです。
簡単に説明すると、関西の寿司屋の酢飯はお酢に砂糖が入っているもの。
関東、江戸前の酢飯はお酢に塩が入っているものという考え方。
そこからお店によって砂糖や塩を加減したり、酢を赤酢にしたり、ブレンドしたりしてオリジナルを追求していくのです。
なので酢飯はいわゆる”企業秘密”と言われていました。
しかし最近、お客様の目の前で炊きたての御飯をおひつに入れてブレンドした酢を合わせて見せるという、これまでは考えられないようなパフォーマンスをするお店が出て来ました。
ただ、僕個人的には見せなくていいと思うのです。
カウンターで厨房の奥からほんのりと感じる酢の香り、これが客である僕たちが食欲をそそられるのです。
見えないほうが”感じられる”、見てしまうと”感じにくくなる”、そんな気がしています。
でも先日うかがったあるお寿司屋さんでは目の前で作った酢飯に、ただ海苔を巻いて出してくれました。
これは出来立てだからこそできる技と旨味。
ただの海苔巻きがご馳走になるということを教えてもらいました。
お店によってはこの酢飯も15分毎に炊いていたり、大量に炊いた酢飯を同じ状態におひつで温度と質を保ち続けるなど、やりかたはそれぞれ。
なんだか酢飯の新時代がやってきたのかもしれません。
さて、今年も『食べマスター』を購読いただきありがとうございました。
来年も美味しい物を食べまくりましょう!
それでは皆様、良いお年をお迎えください。
寺門ジモン
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