通年の人気店ですが、5月。この時期、特に予約が取れません。一度この味を知ってしまったお客様は、この季節になると”舌”と”脳”が思い出さざるをえない料理があるからです。それがこの『花山椒のしゃぶしゃぶ』です。皆さん、山椒の粉や実は食べたことがあるでしょ? でも花山椒はなかなかお目にかかれません。山椒の雄花は蕾が膨らみ始めてから花が咲くまでの3日間くらいが旬。旬も短ければ、収穫できる量も少なく。そして上質であればある程、希少だからです。 牛肉逸品料理と言っても、この料理の主役はあくまでも花山椒。まずお皿いっぱいに広がる香りを楽しんで。あぁなんと素晴らしきかな山の恵み、山の喜び。それを上品な出汁いっぱいの鍋に、手でバサッと豪快に花山椒が入ります。するとたちまち花山椒の香りがフワーっと部屋中に広がります。少し炊いてから、牛肉をささっとくぐらせお椀に盛られる。とどめとばかりに花山椒もさらに乗せられ、目の前にやって来ます。口にいれるとまず広がる香ばしい花山椒の香りに続けてお肉の旨味が、脂がやってきます。あぁ大変だ、何枚でも食べられる。 心地よい舌の痺れ……いえ、心が痺れてます。早く春にならないかな。