割烹と言うと最近では京料理が主流になっていますが、やはり東京で食べるべきは江戸料理なのかもしれません。店主の福田さんは江戸料理研究家。1935年創業のこのお店は冬は河豚、春はねぎま、夏は鮎、秋は松茸と季節の江戸の鍋料理を提供しているお店。先に言ってしまいます、このお店残念ながら2016年5月末をもって閉店されることになってしまいました。なので、希少なこの江戸料理、お時間がある方はぜひ経験していただきたい。しかもこれからの季節はボクがいちばん好きなねぎま鍋のシーズン。築地の馴染みの卸問屋さんから買い付けている鮪と葱を使ったシンプルな具材ありながら食べ進むにつれて極上の出汁を引き出すやさしい鍋。ここのねぎま鍋は全て鮪のトロを使っています。うーん、正確には江戸料理においてねぎま鍋はトロ! 鮪の中で一番足が速い部位のトロは捨ててしまうものだった、そんな料理人の策から生まれた料理なんですよ。出汁のベースは日本酒とワイルド胡椒。芹のアクセントも効いています。料理はコースのみ。こちらの先付け、粋です。ほんのり甘い江戸の玉子焼きと酢の物とうるめイワシ。食材は季節によって変わりますが、甘いもの・辛いもの・酸味のあるもので構成されているんです。鍋の最後は雑炊にせず、温かい御飯に汁をかけていただくのが通。江戸料理って粋だなぁ。