最高の目利きをされた食材を店主の魂を込めて調理された料理は、その全てが美しく、全てが華やかで可憐。しかもそのシーズンに食べなくては行けない旬の食材が余すところなくフルコースに収まっている。もうパーフェクトな構成に毎回ノックアウトされています。店主の松川さんは滋賀県にある料亭『招福桜』、広尾の『青草』で修業された方。経験は宝。それだけに素材の持ち味を熟知しているので、驚きの食材の組み合わせができるのも納得。例えば名物の渡り蟹の飯蒸し・ベルーガキャビア乗せは蒸した餅米の上に渡り蟹とキャビアが。塩分のバランス、それぞれの量のバランスともに”うまい”が緻密に計算されているのであろう、ひとくちで脳がバカになる旨さ。また、ボクの中で割烹は〆の御飯が何かで決まると思っている部分があるんです。それは”胃袋の余韻”につながるから。こちらでは炊きたての御飯に自家製の生からすみ、イクラ、ちりめん山椒、海苔が添えられてくるのですが、すべてをどれだけ乗せてもいいんです。自分だけの丼で〆られるという嗜好への導きと、それを盛る楽しさ。全てにおいて店主の余裕が表れています。しかし忘れてはならないのがフィニッシュの甘味。黒豆の水ようかんはどれだけお腹がいっぱいでもストンと胃に落ちて行く、水のごとしなめらかさ。このお店が5年後、10年後どんな進化をとげているのか、こわいっ!