先代のご主人が厨房に立たれていたころから通っているお店。現在は二代目の息子さんがその仕事を継いでいる。『本物のとんかつとはこうあるべきなのだ』といわんばかりに、気持ちの行き届いた仕事をカウンター越しにライブで見せてくれる。温度の高い鍋と低温の鍋、いずれもラード油。まず高温で揚げて肉の旨味を閉じ込め、それから低温でゆっくりと中に火を入れていく。このとんかつ、ラードなのに全くしつこくない。テーブルに置かれた瞬間、正確には包丁を入れられた瞬間から肉汁がみるみる溢れ出しています。そして驚くほど衣はカリッとドライなのに、中は半端じゃなくジューシー。薄い衣と豚肉がピシーーーッとくっついて、優しく噛んだ瞬間に衣のヴェールが脱げて、お肉の旨味がドーンとやってきます。すべてが経験と仕事がなせる技。
